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「why型思考」と「能動性」が、不確実な未来には重要【細谷 功】

30年後の「エリート」とは、どんな人物なのか。未来をリードする人材のあるべき姿を追究する「就プロ」オリジナル連載、今回はベストセラー「地頭力を鍛える」などの著書、細谷 功(ほそや・いさお)さんにお話を伺いました。前回は「AI時代を生き抜く思考法」について、お話をいただきました。今回は、思考力を身につけるためのマインド・スタンス・具体的な方法論を伺っていきます。

2018.05.12.Sat

30年後の「エリート」とは、どんな人物なのか。未来をリードする人材のあるべき姿を追究する「就プロ」オリジナル連載、今回はベストセラー「地頭力を鍛える」などの著書、細谷 功(ほそや・いさお)さんにお話を伺いました。

 

前回は「AI時代を生き抜く思考法」について、お話をいただきました。今回は、思考力を身につけるためのマインド・スタンス・具体的な方法論を伺っていきます。

これからの世界を生き抜くためのスタンス

―「能動的であれ」とのお話がありましたが、そのためにはどのような心構えが必要になりますか。

細谷:ポイントは、「とにかく最初の一歩を踏み出す」ことです。

回りの人が立ち止まっているときに、勇気を持って自分が一歩踏み出す。それはつまり、「人と違うことをやる」ということであり、「リスクを冒す」ということでもあります。

知識が問われる仕事には、必ず正解があります。ですから必要な知識を知ってさえいれば、そこにリスクはありません。しかし思考力が問われる仕事は正解のない世界であり、リスクを冒すことは避けられません。

たとえば自分がいくら「こうするしかない」と思っても、他の人が同じように思うかはわかりません。そんな状況で自分が最初の一歩を踏み出すためには、根拠のない自信といったものも必要になってきます。

―性格的に言えば、「起業家タイプ」ということになるでしょうか。

細谷:まさにその通りです。世の中には現状に何か不満があったとき、愚痴を言って終わる人と、自分で解決策を考える人がいます。前に出て仕事を引き受ける人もいれば、そういう人の仕事ぶりに不満ばかり言っている人もいます。

起業家は「自分だったらこうする」と意見を述べ、自ら動くことで自分の意見に対して責任を取ろうとする。それが起業家のスタイルです。だからある意味、「不満がある人」は「不満もない人」よりは能動性は高いとも言えます。

ただし、全ての人に起業を勧めているわけではありません。重要なのは「問題を自ら発見して、最初に動く側に回ること」です。

起業家の場合は社会問題を自ら見つけて起業するという形で動き出しているわけですが、会社勤めや日常生活など、あらゆる所で先頭に出る必要は必ずしもありません。世の中は基本的に「多数の後に続く人」で成り立っていますから。

重要なのは、自分の得意なところを見つけて、そこでは上記のように能動的に動くことです。

会社で言えば、プロジェクトを提案するのでも、新しい活動を提案するのでも良いかもしれません。営業職の立場であれば、顧客要望に従って動くのではなく、こちらから提案する。そんな動きをしていくのでも良いかもしれません。

かつて「仕事ができる人」とは、与えられた仕事を早く的確に処理できる人のことでした。しかし今後は人から言われる前に自ら動ける人、能動的に動く人こそが「仕事ができる」ということになるでしょう。

「上位の目的を考える」癖をつけよ

―能動的に考え、動くための具体的な方法はありますか。

細谷:日常の習慣としては「常により上位の目的を考えること」が大切です。

学校でも職場でもそうですが、上から言われたことをそのままやっている人と、言われていないことまで先回りして考える人がいます。

たとえば上司から「あの件の書類を作ってくれ」と言われた際に、完璧な書類を作ることしか考えない人と、「作った書類を何に使うのだろうか」と考える人です。後者はその書類を作らせようとする上司の目的を、自分も上司の目線で考えるのです。

たとえば先生から「これについて調べておいてね」と言われたとしても、調べること自体は本当の目的ではありません。より大きな目的が存在し、そのために調べようとしているわけです。

そういう状況で「完璧に調べてレポートにしよう」とだけ考えるのは受動的な発想であり、「なぜこれを調べるのだろう」と考えるのが能動的な発想です。そうすれば「そもそもその書類や調査は不要かも知れない」という発想も出てきます。

この場合の「なぜ」という言葉は象徴的です。「なぜ(Why?)」という問いを発することによって、自然とより上位の目的を考えていくことになるからです。

能動的に思考するためには、質問の仕方を工夫することも一つの方法です。

たとえば社会人の先輩に、自分に向いた就職先を尋ねるとき、「どの会社がいいでしょう」と訊くのではなく「あなたはなぜ今の会社を選んだのですか」と訊いてみる。

お勧めの投資先を訊くときは、「どの株がいいですか」だけでなく「なぜその株がいいのでしょうか」と突っ込んでみる。質問の内容を「What」から「Why」へ変えるのです。そうすることで、常に一歩先の目的について尋ねることになり、それが習慣化することが能動的な発想につながります。

応用として、たとえば面接の席で「御社はなぜ~なのですか」という「Why型」の質問をぶつけてみたり、こちらの意見について説明を求められたときに、「なぜそう考えたのか」という「Why型」の説明をするといったことがあります。

この「Why型」という形は、自分を成長させてくれる先輩を見分ける方法としても使えます。たとえば「どんな会社がいいですか」と尋ねたとき、「あの会社がいいよ」と答えてくる人と、「あの会社はこういう観点から見るといいよ」と答えてくる人がいます。

「あの会社がいい」という言い方は、相手の事情に関わりなく一つの正解を与えようとしています。

しかし、そこに「こういう観点から見ると」というワンステップが入ることで、「自分の考えはこうだけれども、それがあなたに当てはまるかどうかはわからない。あとは自分で考えなさい」というアドバイスになります。これは一見無責任のようでも、相手のことを考え、成長を促す答え方といえます。

答えられた側はその場では「もっとはっきり言ってくれればいいのに」と感じるかもしれませんが、「自分の頭で考えるきっかけを与えてくれているんだな」と考え、感謝しなければなりません。

目の前の未来を考える

―2050年、つまり2020年の30年後には、時代はどう変わっているでしょうか。

細谷:2050年はこれから社会に入る人たちがキャリアの終盤を迎える時期にあたります。

私は社会人になってから30年になりますが、おそらく過去の30年間よりも、今後の30年の変化の方が激しいでしょう。著名なコンピューター研究者であるレイ・カーツワイル博士が指摘しているように、AIの進歩は指数関数的で、時代が進むほど変化が急激になっていくと考えられるからです。

今、話題となっている自動運転にしても、ほんの2、3年前にはまだ夢物語のレベルでした。ところが今や、人間側に倫理的な壁があるだけで、技術的にはもう十分実用可能な段階に達しています。3年でこれなのですから、今から30年先となると、その変化の度合いは想像もつきません。

「ネットから脳に知識を送り込む」という意味合いで「脳にアップロードする」という言葉が使われ、「2050年にはそれぐらいとっくにできるようになっている」という人もいます。

知識に加えて思考のフレームワークまでアップロードできれば、すべての人の知識の量が等しくなるのはもちろん、人々の知的能力まですべて同じになってしまうかもしれません。

そのときはすべての人がなんらかの形で機械につながり、「人かAIか」ではなく、「人プラスAI」というチーム感覚が当たり前になっているでしょう。

「受動的か能動的か」という話をしましたが、能動性を生む要因を脳化学的に解明できれば、前向き、後ろ向きといった心の持ちようも自由にコントロールできるようになるはずです。

その日の気分によって「今日はかったるいから、受動的な気持ちでいこうか」などと選べる時代が来るかもしれません。

そんな時代にはたして知的能力の個人差が存在するのか。ないとすれば他人との差別化など考えてもしかたないことになります。

結局のところ、私たちにできるのは目の前の現実を見つめながら、3年先、5年先といった近い未来の状況を予測し、自分の取るべき道を考えることしかないのでしょうね。

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