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AI時代は「知識」より「思考力」を身につけよ【細谷 功】

30年後の「エリート」とは、どんな人物なのか。未来をリードする人材のあるべき姿を追究する「就プロ」オリジナル連載、今回はベストセラー「地頭力を鍛える」などの著者、細谷 功(ほそや・いさお)さんにお話を伺いました。「思考」をテーマに様々な名論を生み出す細谷さんが考える「2050年を生きる力」とは?AI時代における「人」や「思考」のあり方は、全ての学生必見です。

2018.04.20.Fri

30年後の「エリート」とは、どんな人物なのか。未来をリードする人材のあるべき姿を追究する「就プロ」オリジナル連載、今回はベストセラー「地頭力を鍛える」などの著書、細谷 功(ほそや・いさお)さんにお話を伺いました。

 

「思考」をテーマに様々な名論を生み出す細谷さんが考える「2050年を生きる力」とは?
AI時代における「人」や「思考」のあり方は、全ての学生必見です。

すでに、AIが人に置き換わり始めている

―このインタビューシリーズのテーマは「2050年を生きる力」となっていますが、出発点としてもう少し近い、2020年を基準にお話を伺えればと思います。

今から2年後、ほぼ直近といっていい2020年に社会はどんな状況にあり、そこからどう変化し、どのような思考方法を持てばそこからの時代を生き抜いていけるでしょうか。

細谷:この先の30年間を考えると、やはりAI(人工知能)が人類社会にとって最も影響が大きなテクノロジーであろうと考えられます。その意味で、直近の2020年の状況から考えてみるのはいい着眼点だと思いますね。

2018年の今、AIの世界では自動運転をはじめとするさまざまなイノベーションが起きています。2年後の2020年には、そうした今現在発展中の技術がはっきり目に見える形で、私たちの雇用や仕事のスタイルに影響を与えはじめているでしょう。

AIの進歩の象徴は、たとえば囲碁です。AIにとって最も難しいゲームと言われた囲碁の世界で、2016年に世界トップクラスの棋士たちがAIに敗北したことは、多くの人に衝撃を与えました。

ビジネス関連でも、世界的な金融機関であるゴールドマン・サックスにおいて、2000年には600人いたトレーダーが、AIの導入により今やたった2人になってしまったというニュースが伝えられ、ビジネスマンたちに大きな衝撃を与えました。

計算や予測が問題となるそうした仕事だけでなく、これまで人間でなければできないと考えられていた、小説やコピーライティング、作曲など感性が問われる創作活動も、すでにAIによって代行されはじめており、そのことがメディアでも大きく取り上げられています。

今後はそういった、これまで人が行っていた仕事が次々とAIにより置き換えられていくことになるでしょう。これまでニュースを通じて見聞きしてきた現象が、これからは現実のものとして私たちの身近で起きてくるのです。

それが始まるのが、おそらくこれから2年後の2020年頃から。つまり2020年という年は、AIが人に置き換わっていく時代のスタートにあたると考えられます。

知識が重要な仕事ほど早く消える

―AIの急速の進歩に対して、私たちはどのような能力を磨くべきでしょうか。

細谷:機械ができる仕事は機械に置き換わっていくとすると、人は機械ができない仕事、不得手な仕事を引き受けることになります。「ではAIには何ができるのか」と考えてみると、それは「人から与えられた問題を解くこと」である、と言えるでしょう。

一昔前のAIは人間が問題を考え、さらに答えも考えてやり、それをAIに教えることで、教えられた同じ種類の作業をAIが大量にこなすという形で使われていました。人間にとって苦痛な、繰り返しばかりの定型業務を代行していたわけです。

しかし今では深層学習(ディープラーニング)の技術が発達し、問題については人間が設定するとしても、答えまでは教えなくてよくなっています。問題を与えた上で、それを解くために必要な大量のデータを入力してやる。すると後はAIがそのデータをもとに自ら考え、答えを導き出す。そういう形になっています。

ここでいう「データ」は、いわゆるビッグデータのように構造化されていない膨大なデータに加えて「知識」にも当てはまります。クイズで出題されるような比較的定型化された知識の領域に関してはかなり以前から、コンピューターが人間を上回っていました。

そこから正解を導き出す作業をAIが自分でできるようになったわけですから、こと知識の量が問われる仕事に関しては、これから急速にAIが人間に置き換わっていくことが予想されます。

―具体的には、どういった仕事がAIに置き換わっていくと考えられますか。

細谷:人間の職業の中には、大量の知識を蓄えることが必要で、その知識の量の多さゆえに一部の知的能力の高い人しか就くことができなかった職種があります。たとえば弁護士であり、医師です。

法律関係と医学関係という違いはあっても、いずれも大量の知識の習得が前提となる仕事であり、その習得作業が人間にとって困難なことであるために、弁護士や医師は人々から尊敬され、時間あたりの単価が高い職業として認められてきました。

しかし人間と異なり、AIにとって知識の習得は容易です。どんなに大量のデータであっても、一度インプットしてしまえば忘れることはありません。

大量の知識が必要なために単価が高いという仕事は、AIに置き換えやすく、しかも置き換えた際の省力化の効果が大きいのです。そのため、そのような職種のうちの知識を活用する部分がまず最初に置き換え対象となってくると考えられます。

ただし、ここで「置き換え」といっているのは「人の仕事がなくなる」というよりは「今の仕事の一部を代替していく」ということなので、人が不要になるというよりはやるべき仕事の内容がシフトしていくと考えた方が良いでしょう。

そうした業種についての人からAIへの置き換えは、これから2020年までの数年の間にも大きく進む可能性があります。経済効果はもちろん、社会的インパクトも大きなものとなるでしょう。

「知識」より「思考力」の時代に

―AIが進歩すると、学生時代の勉強は無意味になってしまうのでしょうか。

細谷:必ずしもそうではありません。

学生を評価する基準は、第一に試験の成績です。いわゆる「勉強ができる人」とは、つまり「試験の成績がいい人」のことでした。

試験でよい成績をあげるためには知識の量も重要ですが、知識さえあればいい成績が取れるかといえば、そうでもありません。知識を問う問題ばかりでなく、思考力を問う問題もあるからです。

ここで「知識」と「思考力」を対比して考えてみましょう。「勉強ができる」「勉強ができない」という区分と、「思考力の領域」「知識の領域」という区分を使い、合計四つの象限を作ることができます。

「思考力」「知識」という観点からは、同じように試験の成績がいい人も、大きく「思考力型」と「知識型」に分けることができるのです。

AIの進歩を前提とすると、今後重要になってくるのは「思考力の領域」であろうと予想できます。同じ「勉強ができる人」の中でも、知識の量を誇る人の重要度は下がっていき、思考力に優れた人の価値が高まってくると考えられるのです。

この思考力型と知識型の落差は、これから2020年までの間にもどんどん広がっていくでしょう。

知識とは、いわば過去の集大成です。知識の世界で扱われるのは既知の事実であり、そこでは「過去に起きたこと」「わかっていること」が重要になります。知識の世界とはまた「正解のある世界」でもあります。

対して思考力の世界においては、「答え」より「問題」が、「過去」より「未来」が重要になってきます。思考力が扱う対象は「未来に起きること」なのです。そして未来に起きることへの対処は、何が正解かその時点ではわかりません。その意味で思考力の世界は、「正解がない世界」と言えるでしょう。

前回:AI時代に求められる人間の生き方とは【山極壽一】
次回:AI時代を生き抜くための「川上思考」とは【細谷 功】

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