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自分の物差しを持ち、2050年を生き抜け【山口周】

30年後の社会を支える「エリート」に不可欠な資質とは何か?その問いを、各界をリードする方々にぶつけていく「就プロ」のオリジナル連載。前回に引き続き、山口周(やまぐち・しゅう)さんにお話を伺います。最終回となる今回は、いよいよ本題となる「2050年を生きる力」についてお話いただきました。「内在的物差し」を持つべき理由とは?

2018.03.21.Wed

30年後の社会を支える「エリート」に不可欠な資質とは何か?その問いを、各界をリードする方々にぶつけていく「就プロ」のオリジナル連載。

 

前回に引き続き、山口周(やまぐち・しゅう)さんにお話を伺います。

 

最終回となる今回は、いよいよ本題となる「2050年を生きる力」についてお話いただきました。

 

「内在的物差し」を持つべき理由とは?

すべきことを決める「ファジー」と、解決策を考え出す「テッキー」

―理想は自分で課題設定でき、かつ問題解決能力もある人材ということですね。

山口:もちろんそれが最強なのですが、実際は問題解決が得意な人と、課題設定が得意な人は必ずしも同じではないようです。

エアビーアンドビーへの出資などで知られるアメリカのベンチャーキャピタリスト、スコット・ハートレーは、

『The Fuzzy and the Techie: Why the Liberal Arts Will Rule the Digital World(ザ・ファジー&テッキー なぜリベラルアーツがデジタルワールドを支配するのか)』(未訳)

という本を出版し、その中で「長年投資を続けてきて、ベンチャー企業の成功パターンが見えてきた」と述べています。

会社には3つの問いがあります。「What(何を) Why(なぜ) How(どうやって)」で、彼によればこのうち「何を」「なぜ」の2つをファジー、つまり夢想家が決め、最後の「How(どうやって)」をテッキー、すなわちテクノロジーの人が解決する。「それが理想の組み合わせだ」というのです。

ファジーがフワッと「世の中、なんかおかしくないか?」と言うと、テッキーが「それはこうやって解決しよう」と提案するわけですね。

ベンチャーを成功に導くためには、「この技術を使えば、こういうことができる」という発想、つまり「手持ちの技術をどう使うか」ではなく、「こういうことができたら痛快だろう」「そのためにこの技術を使おう」という発想が求められているというのです。

つまり企業としての存在意義を決めるのは、技術者ではなく課題を設定する人だということです。

―人により得意分野が異なる、と。

山口:考えてみると過去の成功例にも、ファジーとテッキーの組み合わせはよく見られます。

アップルのスティーブ・ジョブズはファジーな人でしたが、スティーブ・ウォズニアックやジョン・スカリーはテッキーだったし、日本のホンダの本田宗一郎と藤沢武夫、ソニーの井深大と盛田昭夫のように、お互いにタイプの違うメンバーが組んで大成功しているケースが多い。

エアビーアンドビーの場合も、創業者のブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアはロードアイランド美術大学で学んだ美術系の人で、そこにハーバード大学で情報技術を学んだネイサン・ブレチャジックが加わり、インターネット上で空いた部屋を貸し借りするシステムが誕生しています。

自信を持って好き嫌いを言えない日本人

―山口さんは近著『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』(光文社新書)の中で、海外の経営トップの人たちが積極的に絵画などアートの勉強をしていることを紹介されています。

日本ではそうした動きはまだ一般的ではないし、エアビーアンドビーのようにアートを学んだ経営者も少ないと思いますが、なぜでしょうか。

山口:海外でも美術を学んだ経営者は少数派ですよ。ただアートや「美」に対して、自信をもって「いい」「悪い」と言えるかどうか、その態度については海外と日本でかなり違うと思います。

ぼくは以前、ビジネスマンの研修で、10枚の絵を並べて、「一番好きな絵から一番好きでない絵まで、順番に並べてください」という課題を出したことがあります。

みなさん、言われて手を動かし始めるわけですが、そこで「この中の3枚は美術史上の最高傑作とされる作品で、4枚はうちの子どもが描いた絵、3枚は美大生が描いた絵です」と付け加えると、とたんに手が止まってしまうんですね。

「せめてヒントを出してくれませんか」なんて言うわけです。

「好きな絵を選べと言っているのに、ヒントも何もないだろう」と思うんですが、それでも手が止まってしまう。外部の物差しは気にせずに、純粋に自分が好きかどうかで判断するということができない。

で、傑作とされる3枚を選んだ人は「さすが○○さん、目利きですね」なんて言われて、その中でヒエラルキーが生まれるんですよね。

子供の絵を選んだ人は「失敗しちゃった」なんて言って。ぼくとしては、ピカソ、マティス、ゴーギャンとあっても、「あなたのお子さんの絵はそれ以上にすばらしかった」と堂々と言ってほしかったんですが(笑)。

おもしろいことに、絵で好き嫌いを言うことが難しくても、ラーメンだと言えるんですね。有名なラーメン店に行って食べてみたけど、好みに合わなかったという人は、「あそこの味は好きじゃない」とはっきり言う。

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美に対して意見の表明をためらわないヨーロッパの人たち

―欧米の人たちは日本人と違いますか。

山口:ヨーロッパの人たちは社会的地位とは関係なく、美に対して自分の意見を表明することをためらいません。

日本でいえばJINSにあたるような、あるフランスの眼鏡会社の社長さんから聞いた話ですが、その会社がイタリアの眼鏡工房を買収し、社長さんが「こんな眼鏡を作れないか」と考えてデザインを持ってその工房を訪ねたのだそうです。

そうしたらそこに長らく勤めているおじいさん、別にデザイナーでもなんでもない人から、「これは美しくない」とバッサリ切り捨てられてしまった。自分たちの工房を買収した会社の社長さんに対して、堂々とダメ出しをするわけですよ。

ある日本の人が黒い服にピンクの靴下でミラノの空港に行ったら、「その組み合わせはよくないね」と空港の職員に言われてしまった、という話も聞きました。

そうした話を聞くと、ヨーロッパの人たちが自分の美的感覚に自信を持っていることを感じます。逆に日本人は自らの感性に対する自信を持てていません。

絵画のフェアをやったり、ギャラリーの売上を見ると、日本では売れるのは名前がある人だけで、名前が知られていない人の作品は知り合いにしか売れないと言います。

反対にヨーロッパの美術愛好家は名を知られていない人の作品を積極的に買う傾向があります。そのほうが安いし、買うことがアーティストへの応援にもなるという考えなんです。そのあたりの美術についてのリテラシー、文化的成熟度には差がありますね。

それは教育の影響もあると思うんです。日本では美術の先生が「どれが誰の絵だか当ててみなさい」と質問し、生徒たちは「先生は何が正解だと思っているのか」と探す。

いわゆる忖度です。そうした忖度が得意な生徒が試験で好成績を得て、偏差値の高い大学に進む。そうした人が社会に出ると、「今度は社長の望みは何か」ばかりを忖度するようになります。

今は世の中がそういう人ばかりになっていますが、人の見方を気にする人ほど「自分の好みで選んでください」と言われると立ちすくんでしまう。正解のない試験というものに慣れていないのです。

この不確実性の時代を生き抜く上でも、外在的な物差しに縛られずに、自分自身の内面に行動の基準となる物差しを持つ人が、日本にもどんどん出てきてほしいですね。

山口氏が語る、2050年を生きる力

―問題解決力・課題設定力・内在的な物差しなど、様々なトピックでお話をいただきました。これらをまとめると、ずばり2050年に活躍する人物とは、どういった人物でしょうか?

山口:ぼくは、2050年に必要な能力というのが現代から劇的に変わるとはあまり思っていないんです。

その前提では「能力の優劣」や「特定のスキルに秀でている」といった点よりも、自分がパフォーマンスする環境を知ることが重要だと感じています。

時計の部品を想像してもらうと、歯車という部品単体で評価をすることは難しいですよね。その歯車が機能するかどうかは、周りのパーツとのフィットが重要になります。

もちろん、最低限のファンダメンタルなスキルは必要です。それを兼ね備えた上では、その人のパーソナリティと、業務内容や周囲のメンバーなど外的要因との組み合わせが、パフォーマンスを左右する大きな要素となります。

それこそ先ほどお話をしたように、問題解決力が高くコンサルタントとしては活躍できても、他の環境では活躍できないというケースもあります。同様に「知能アセスメント」のような試験で非常に高い点数を取る人物も、特定の環境では活躍できないというケースも多々あります。

そう考えると結局は、自分がどういうことが好きで、どういう環境でパフォーマンスを出すことができるのかを知り、そこに身を投じることが重要だろうと、それは2020年も、2050年も変わらないと思うのです。

自らの価値基準を明確にした上で、様々経験をし、深く内省をする。そんなことが変わらず重要になるのではないでしょうか。

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前回:「課題設定力」がイノベーションを起こす【山口周】
次回:京大総長が語る、2050年のエリートの姿

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