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未来には「それなりに安定して生きる」という選択肢はない【経営コンサル・小宮一慶】

これからの時代の「エリート」に求められる究極の資質は何か? 前回に引き続き、経営コンサルタントの小宮さんにお話を伺いました。 小宮さんが語る「これからの時代、こぢんまり生きるという選択肢はない」とはどういうことなのでしょうか?

2018.02.09.Fri

就活生の上位5%に当たる「就プロ」読者は、現在20代前半。2050年には、まさにリーダーとして組織で活躍している人材も少なくないでしょう。

 

30年後の社会を支える「エリート」に不可欠な資質とは何か?

 

その問いを、各界をリードする方々にぶつけていく「就プロ」のオリジナル連載が前回からスタート。前回(リンク)に引き続き、人気経営コンサルタントとして知られる小宮一慶(こみや・かずよし)さんに聞きました。

「実行力」がある人とない人の差

―前回、30年後を生きるエリートにも、思考と感情の両方が必要だという話を伺いました。小宮さんが不可欠と考えるもう1つの資質「実行力」について教えてください。

小宮一慶さん(以下、小宮):頭を使って思考しているだけだったら、学者にしかなれないわけですよ。学者を別にバカにしているわけじゃないですけれど、僕らはビジネスパーソンですから、実践で結果を出さない限り、誰もついてこない。

だからそういう意味で、思考したことを「実行力」をもって行動し結果を出すことが、とても大事なんです。で、どうしたらそれが身につくかというと、「言ったことをやる」が基本。必ずやるんですよ、言ったことは。

―それが「実行力」の基本だと。

小宮:そう。どんなに小さいこともやるんですよ。誰かに「今度、飲みに行きましょう」って誘ったら、必ず飲みに行く。時々適当なことを言う人、いるでしょ? 口だけの人。そういう人はダメですね。

だからね、とにかく、言ったことをやる。人から信用を得る一番の方法は、約束を守ることなんです。だから子どもとでも、恋人とでも、何か約束したら必ずそれをやる。そこから実行力はつくんですよ。

―言うとやらなきゃいけなくなるから、「何も言わない」という人もいるかも。

小宮:「言う」は「思う」と一緒。口で言わないにしろ、自分がこうしよう/こうしたいと思ったことはやる。どこかに行きたいな、何かを食べたいな、何かを買いたいな…っていうのは誰にだってあるでしょう?

そういうふうに心で思っていることを、言う/言わないに関係なく行動していかないと実行力はつきません。

「こぢんまり生きる」という選択肢はない

小宮:世の中ってね、こんなの言わずもがな、ですけど、アウトプットしか評価されないんです。だから僕、「頑張っている自分にご褒美」なんて言う人が嫌いなんですよ。

もちろん、頑張るのは悪いことじゃないですよ。でもね、「頑張っている自分にご褒美」って、結局ご褒美が目的化しているでしょ?

難しい目標を設定して、クリアした結果、ご褒美をもらうのならいいですよ。でもね、結果が出ているわけじゃないのに、あいまいな基準で、なんとなく「自分にご褒美」なんて言っている人はうまくいかないですよ。

―失敗しても、とにかくやる、と。

小宮:当たり前です。失敗せずに物事を行えるはずはないですよ。失敗を回避しようとするのは悪いことじゃない。でも、リスクがあるから、リターンがある。特にエリート層の人たちは、リスクを避けて、こぢんまり生きるのはもったいない、と思います。

―でも、こぢんまり生きたい人、多いですよね。

小宮:そうなんだけど、もうおわかりのようにね、これからの世界は間違いなく変わっていくわけですよ。そうした時に、こぢんまり生きようと思っても、おそらく生きられないですよ。こぢんまり生きたいのは別に悪いことじゃないですよ。価値観の問題だから。

でも「生きられない」っていうのが現実です。

僕は1981年に京都大学を卒業して、東京銀行に入りました。景気のいい時だったんで、僕のゼミからは過半数が確か銀行へ就職したんですよ。

でもね、バブル崩壊による銀行大再編のせいで、現時点で最初の就職先に残っている人なんて皆無です。

つまり、ある程度のお給料をもらってさえいれば、こぢんまりでいい、なんて思って就職をしたとしても、思い描いた通りにはいかなかったということ。僕らの時代でさえこうなんだから、これから先の時代はもっと高い確率で、こぢんまりなんて生きられません。

日本は「20年間、給料が増えていない国」

小宮:逆に、挑戦する人にはチャンスが巡ってくる、ということです。それともう一つ言っておくとね、日本にいても間違いなくダメだと思いますよ。厳しいようだけど。

どうしてか、というと、GDP(国内総生産)は、最近統計の取り方を変えたので*、若干増えたんですが、変更以前をベースにして言うと、90年代初頭からずっと横ばいなんです。つまり、この間、成長していない、っていうこと。
*2016年7〜9月の2次速報値以降、これまで除外されていた研究開発費を算入することになり、3%ほど上積みされる結果になった。

—過去20年間、まったく成長していない経済の中ではチャンスがない、と。

小宮:そう。GDPはある期間に国内で算出された「付加価値」の合計で、「付加価値」とは「売上高」から「仕入れ」を引いたものなんだけれど、「付加価値」から一番、支出しているのは人件費なんです。

だから付加価値の合計であるGDPは、いわば“給与の源泉”。

GDPが90年代中盤から、まったくと言っていいほど変わっていないのだから、給料が増えるわけないですよね。ちなみにショッキングな話をすると、過去最も平均給与が高かった年は1997年です。びっくりするでしょ?

―日本は「20年間、給料が増えていない国」というのは、ショックです。

小宮:初任給で比べてみよう。僕が1981年に東京銀行に就職した時、初任給は10万円ちょっと。その後、80年代後半にすさまじいバブル景気があって、給料は一気に2倍になりました。でもその後は横ばいだから、90年代初頭に就職した人と今の新卒の初任給はほとんど変わっていないと思いますよ。

—初任給も90年代初頭から変化なし…。

小宮:多くの人は、この国は平和で物価も上がらなくていい国だって思うでしょ?

たとえば今、東京メトロの初乗り料金は170円。1995年に160円に値上げしたあと、消費税率が8%になった2014年に170円に上っただけで、20年以上、初乗り料金はほとんど変わっていません。

90年代初頭、仕事でニューヨークによく出張していたんですが、地下鉄の料金は当時1ドルでした。それが現在は2ドル75セント。なぜなら、90年代初め、アメリカのGDPは6兆ドルで、今が18兆ドル強。つまり3倍伸びているわけです。

同期間に中国も約1兆ドルから10兆ドルまで伸びている。日本だけが5兆ドルほどのままなんです。だから、物価も上がらなければ、給料だって変わりません。

―確かに、言われてみればそうですね。

米・名門経営大学院を卒業した人の初任給は?

小宮:もっとショッキングな話をしてあげましょうか。今、アメリカのダートマス大学タック経営大学院でアジア地区アドバイザリーボードのメンバーをしているんです。それで年に1回、香港で集まりがあるんですが、そこで毎年話題に上るのが、同大学院の授業料と卒業から3年後の給料についてなんです。

授業料は年間6万5000ドルなので、2年通えば生活費を入れて20万ドルぐらい。大学の学部を出てから3年前後で入学する人が多いので、同大学院を卒業した3年後には30歳前後です。

さて、その時点での平均給与はどのくらいだと思いますか?

—MBA(経営学修士)を修了したエリートですよね。1000万円超…つまり10万ドル強ですか?

小宮:毎年卒業生が285人ほどいて、平均給与が18万5000ドル*です。
*2017年12月現在、1米ドル=113円換算で2090万円。

それだけの年収があれば、同大学院を卒業するのに20万ドルかかっても、すぐにもとを取れちゃうんです。しかも、学長は「今年卒業する人は、3年後もっといい給料をもらっているだろう」と言うんですね。大手の経営コンサルティング企業であれば、大学院の新卒に20万ドルを出す時代になってきたわけです。

―すごいですね。日本の就活で初任給が500万円で高いと言っているのとはレベルが違いすぎますね。

第3回では、外銀・外コンを目指す就活生に向けたメッセージを聞きいていきます。

前回:2050年、ビジネスリーダーに必要な資質とは?
次回:本物のエリートは「詰め」が違う 外銀・外コンに就職したい君たちへ

(ライター・吉岡名保恵)

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